平成21年6月27日
身の丈生活のすすめ
経済が急激に悪化して久しいが、高度成長期から数年前までの三十年間がむしろ異常だったのであり、
世界レベルで見れば、今の方が正常なのではなかろうか。
一部コメンテーターのデフォルメされた話に同化され、何でもかんでも、身の程知らずの生活水準の基準
を勝手に設定し、それが満たされない時には不平不満を感じ、全てを人のせいにする生活よりも、身の丈
に合った生活、分相応の生活を感謝しながらすることの方が、遥かに幸せな生活だとは考えられないだろ
うか。
企業経営においても急激な変化の時代には、十年前、いや五年前の成功要因は、再び成功要因にはなり
得ず、むしろ失敗要因とさえなる。過去の成功体験が大きいほど、逆に、変化への対応が遅れてしまうので
ある。
蛙を水の中に入れて徐々に温度を上げていくと脱出を試みることなく煮殺されてしまうが、急にお湯の中に
放り込むと慌てて逃げ出すらしい。つまり、穏やかな変化には対応できないが、急激な変化には対応できる、
ということである。
ならば、最近の急激な経済変化を、地球市民としての正常な生活水準に戻し身の丈にあった生活をする
チャンス、と捉えてはどうだろうか。勿論、最低限の生活さえ出来ない人々への公的支援の必要性や、生活者、
企業家の向上心を否定するつもりは毛頭ない。だが、例えば、余った時間を家庭で父親本来の役割を果たす
こと、あるいは地域社会との係りを大切にする生活等に振替えることも可能ではないか。
衣食足りても礼節を知らない生活は、飽食に起因する生活習慣病急増、使い捨て経済による環境破壊等、
大きな犠牲を強いてしまった。そして何よりも、かつて世界から一目置かれた日本的メンタリティーが喪失され
てしまったことは大損失である。モンスターピアレントやクレイマー、本質を突けず、あら探ししか能のないジャ
ーナリスト擬きの台頭などはその典型かもしれない。
経済の世界では失われた十年を取り戻そうと必死である。しかし、もっと大事な、失われた数十年を取り戻す
チャンスの到来だと考えたい。
(文)
2013-11-30 13:48:32
麺声人語(徳島新聞経済サロン執筆原稿)
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