平成17年1月15日
ピンチはチャンス
元旦のある記事を見て愕然とした。木沢村では昨年一年間に子供がひとりも生まれなかったらしい。
少子高齢社会の到来は認識していたが、県内自治体で現実に出生ゼロが起こったことにショックを禁
じえなかった。
また、筆者は忘年会で夜の繁華街に出る際、早めに出かけて周辺商店街等での街角ウオッチング
を習慣にしているのだが、昨年末には、筆者が徳島の夜の街にデビューした頃(僅か二十年前)に比
べて、歩いている人の数が半分以下に減ってしまったと感じた。これは不況の影響もさることながら、
その頃、酒席で大活躍していた世代の高齢化による出没頻度低下、その後継世代の価値観変化に
よる旧来の繁華街での絶対数減少という人口問題の影響が大きいと思う。
これは若者が減り、老人ばかりが増える近未来社会の先行指標とも言えよう。某調査によれば二十五
年後、県人口は十七パーセント減の六十八万人になり、その内の生産年齢人口は、現在の六十三パー
セントから五十七パーセントにまで落ち込む。この予測は、労働力不足のみならず、徳島の個人消費を
確実に縮小させることをも意味する。筆者の属している食品業界から見れば、徳島県市場は、胃袋の
絶対数は減り、しかも高齢化で胃袋のキャパシティも小さくなるという二重苦市場と予測されるのである。
しかし、経営戦略の本質が環境適合であることを考えれば、この変化は、新たな市場機会の誕生かも
しれない。それは、量的価値から質的価値への転換である。トヨタ自動車は、人口構成の変化に対して
「小さな高級車開発」との社長号令をかけたという。食品で言えば、「従来品よりも確実に美味しく、トレサ
ビリティも安心、健康にもプラス、そして量目は少なめ、でも価格はちょっぴり高めかもしれない」、こんな類
の商品のニーズが確実に高まるように感じる。
考え方を変えれば、環境変化は大きなチャンスの到来でもある。新年にあたり、ピンチはチャンスとポジ
ティブに捉えたいものである。 (文)
2013-11-30 13:04:18
麺声人語(徳島新聞経済サロン執筆原稿)
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